近年は一人暮らしの高齢者や身寄りのない方が増えており、生活に不安を覚える人も少なくありません。しかし、頼れる家族がいない場合でも、事前に準備を進めることで将来の負担や心配を軽減できます。本記事では、身寄りがない高齢者を取り巻く現状や課題、安心して老後を過ごすために今からできる対策について分かりやすく解説します。
身寄りがない高齢者は各種契約・日常生活・死後手続きで困ることが多い
近年は一人暮らしの高齢者や身寄りがない高齢者が増加しており、老後の生活に不安を抱える人も少なくありません。家族が近くにいない、あるいは頼れる親族がいない場合、病気や介護が必要になったときだけでなく、認知症を発症した場合や亡くなった後の手続きにおいてもさまざまな困難に直面する可能性があります。とくに高齢になるほど判断能力や身体機能の低下が起こりやすく、一人で対応することが難しくなる場面が増えていきます。安心して老後を過ごすためには、どのような問題が起こり得るのかを知り、早めに備えておくことが大切です。
保証人がおらず入院や施設入所の手続きが難しくなる
身寄りがない高齢者が直面しやすい問題の一つが、入院や介護施設への入所時に必要となる保証人の確保です。法律上は保証人がいないことだけを理由に入院や入所を拒否することはできませんが、実際には緊急連絡先や身元保証人を求められるケースが多くあります。そのため、手続きがスムーズに進まなかったり、受け入れ先探しに苦労したりすることがあります。また、賃貸住宅を契約する際にも連帯保証人を求められることがあり、高齢であることを理由に契約が難しくなることも多いです。
判断能力の低下により金銭管理が難しくなる
高齢になると、加齢による判断力や記憶力の低下によって金銭管理が難しくなることがあります。公共料金や税金の支払いを忘れてしまったり、必要以上の買い物を繰り返したりすることで、家計管理に支障をきたすケースも少なくありません。また、身近に相談できる家族がいない場合、金銭トラブルに気づきにくく、詐欺や悪質商法の被害に遭うリスクも高まります。日頃から財産管理の方法を考えておくことが重要です。
認知症を発症すると契約行為ができなくなる
認知症などによって判断能力が失われると、自分で契約行為を行うことが難しくなります。施設への入所契約や介護サービスの利用契約、金融機関での手続きなど、生活に必要なさまざまな契約を一人で進められなくなるかもしれません。身寄りがない場合は代わりに手続きを行う人がおらず、必要なサービスを利用できなくなるおそれもあります。そのため、将来的な判断能力の低下に備えた準備が欠かせません。
孤独死のリスクが高まる
一人暮らしの高齢者は、病気や事故によって自宅で倒れた際に発見が遅れる可能性があります。とくに地域との交流が少なく、日常的に連絡を取る相手がいない場合は、異変に気づいてもらえないまま時間が経過してしまうこともあります。また、体調不良を感じても受診を先延ばしにした結果、病気の発見が遅れるケースも決して少なくありません。孤独死を防ぐためには、見守りサービスの利用や地域とのつながりを維持することが大切です。
死後の事務を行う人がいない
身寄りがない高齢者にとって大きな不安となるのが、亡くなった後の手続きです。葬儀や火葬、納骨、遺品整理、各種契約の解約など、死後には多くの事務手続きが発生します。しかし、これらを担う家族や親族がいない場合、手続きを行う人がいなくなってしまいます。
また、自分が希望する葬儀の形式や納骨方法があっても、それを実現してくれる人がいない可能性も否定できません。死後の手続きについて事前に準備しておくことで、周囲への負担を減らし、自身の希望も実現しやすくなります。
身寄りがない高齢者があらかじめしておきたい対策
身寄りがない高齢者が安心して老後を過ごすためには、判断能力が十分にあるうちから将来に備えた準備を進めておくことが大切です。認知症による判断能力の低下や入院・介護が必要になった場合、さらには亡くなった後の手続きまで見据えて対策しておくことで、多くの不安を軽減できます。任意後見制度を利用する
将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて活用したいのが任意後見制度です。元気なうちに信頼できる後見人や依頼内容を決めて契約しておくことで、判断能力が不十分になった後も財産管理や生活面のサポートを受けられます。自分の意思を反映した支援を受けられる点が大きなメリットです。
尊厳死宣言書を作成する
終末期医療に関する希望を明確に残したい場合は、尊厳死宣言書の作成を検討しましょう。回復の見込みがない状態になった際に延命治療を望まないことや、苦痛を和らげる医療を優先してほしいことなどを事前に表明できます。自分らしい最期を迎えるための大切な準備の一つです。
死後事務委任契約を結ぶ
死後事務委任契約は、葬儀や納骨、各種契約の解約、医療費の精算など、亡くなった後に必要となる手続きを第三者へ委任する契約です。身寄りがない場合でも、自身の希望に沿った対応を依頼できるため、死後への不安を軽減できます。遺言書を作成する
財産の承継や遺贈について希望がある場合は、遺言書の作成も重要です。とくに公正証書遺言は信頼性が高く、紛失や改ざんのリスクを防げます。相続や財産処分に関する意思を明確に残すことで、自分の希望を実現しやすくなります。
財産管理委任契約を活用する
身体機能の低下などで外出が難しくなった場合に備え、財産管理委任契約を結ぶ方法もあります。預貯金の管理や公共料金の支払い、介護サービスの手続きなどを代理人に依頼できるため、日常生活を円滑に維持しやすくなります。老人ホームや高齢者向け住宅を検討する
元気なうちから老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの入居先を検討しておくことも大切です。施設で生活することで見守りや生活支援を受けられ、孤独死のリスク軽減にもつながります。身寄りがない方でも利用できる施設は多いため、早めに情報収集を進めておくと安心です。
身寄りがない高齢者が困りごとを相談できる窓口
身寄りがない高齢者が将来への不安を解消するためには、一人で悩みを抱え込まず、専門機関や支援団体に相談することが大切です。老後の生活設計や財産管理、身元保証、相続などの問題は専門的な知識が必要になることも多いため、状況に応じて適切な窓口を活用しましょう。司法書士・弁護士
司法書士や弁護士は、遺言書の作成や相続手続き、成年後見制度の利用など、法律に関する幅広い相談に対応しています。専門的な知識に基づいたアドバイスを受けられるだけでなく、必要な手続きの代行を依頼することも可能です。将来の財産管理や認知症への備えについて具体的に検討したい場合に心強い存在といえるでしょう。
NPO法人などの民間事業者
近年は、高齢者向けの身元保証サービスや見守りサービス、生活サポート、死後事務支援などを提供する民間事業者も増えています。サービス内容や費用は事業者によって異なるため、複数の事業者を比較しながら自分に合った支援を選ぶことが大切です。身寄りがない高齢者にとって、日常生活から死後の手続きまで支援を受けられる有力な選択肢となります。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の生活や健康、介護に関する総合的な相談窓口です。各自治体に設置されており、無料で相談できる点も大きな特徴です。民間サービスの利用に不安がある場合や、どこに相談すればよいか分からない場合でも、適切な支援制度や専門機関を紹介してもらえます。まずは地域包括支援センターに相談し、今後の対策についてアドバイスを受けるのもよいでしょう。